こんにちは。くんぱす先生です。
私は認知症疾患医療センターに勤務する医師で、認知症予防健診から終末期のお看取りまで認知症の全段階の診療を日々行っています。
診察室では認知症ご本人の診察が中心となってしまうので、介護者のサポートがしたくてサイトを立ち上げました。
このサイトでは、日々認知症診療に携わる医師の立場から、認知症介護をされている方にとって助けとなる内容を発信しています。

認知症かもしれない、と思ってはじめて病院に行くんだけれどどんなことをするのか分からないから緊張するわ、、

病院でどんなことをするか予測がつかないと不安や緊張で、受診の足が遠のきますよね。
今回は、はじめて受診するときにどんなことをするのかを分かりやすくお話します。
認知症は早く受診したほうがいいというのは頭では理解しているけれど、なんだか不安という方は少なくありません。
この記事をお読みいただき、病院でどんなことをするのか知ることでその不安が軽くなるといいなと思います。
初診の予約をするまでのステップはこちらでお話していますので参考にしてください。↓
”認知症疾患医療センター”ってそもそも何?という方はこちらをお読みください。↓
今回お話する内容は、ある一つの認知症疾患医療センターの内容なので、医療機関によって内容は異なることをご了承ください。
あくまで一つの例としての参考まで。
初診時の持ち物
上記の記事でも書いたので重複しますが、念のためこちらにも載せておきます。
- 保険証
- お薬手帳
- 最近の健康診断の結果
- (紹介状)
- 相談したいこと、経緯などをまとめたメモ(簡潔に)
初診の流れ
受付→問診票記載→診察→検査→再診察→次回予約→会計
初診の場合はたくさんお聞きしたいことがあるので、問診票記載や診察に時間がかかります。
問診票
問診票を書きます。どんな内容を記載するのかというと
- 生活史:出生地、最終学歴、職歴、家族構成(兄弟や同居家族など)、家族歴など
- 現在お困りの症状(いつ頃から、どう変化しているか、そのスピード感など)
- 内服内容
- 今まで罹った病気(既往歴)
- 食事や睡眠はとれているか
- 飲酒・喫煙など嗜好
- アレルギーの有無
- 要介護認定は受けているか、介護保険サービスの介入はあるか
- 在宅ケアマネージャーや地域包括支援センターなどの支援介入があるか
こういった内容になります。分かる範囲で構いません。
この問診票一つとっても、ご自身で書かれるのか、症状の把握をされたご家族がいるのか否かなどがなんとなく伝わってきます。
診察
診察だけでも奥が深いのですが、なるべく簡潔にお話します。
待合いでの様子や問診票への記入の様子なども看護師などコメディカルと共有することがあります。
なかなか問診票を書くのに戸惑う様子があるなど、認知機能が伺える場面も多いからです。
そして診察では、問診(これまでの経緯、既往歴他)や身体診察に加え、以下のようなことも併せて診ています。
- 診察室に入られるご本人の様子(歩行状態、礼節の保たれ方、病院・医者に対する不信感の程度など)
- 付き添いのご家族との関係性
- ご家族のご本人への対応
- 困っているのは本人か家族か、その両者か
- 今後どうしていきたいかの意向(精査したい、自宅で永く過ごしたい、施設入所が安心など)
認知症に対する考え方や、介護保険サービス(ヘルパーや通所など)への希望も人それぞれです。
そのため、ご意向を引き出すことも私は大切なことだと思っています。
検査
まずは、認知機能がどの程度なのか、治療介入を要する病態が隠れていないかなど病態を把握します。
当日結果が出るものと、後日結果を聞きに再受診していただくものがあります。
- 認知機能検査(心理検査)
- 頭部単純CT検査
- 心電図
- 胸部・腹部X線検査
こちらは概ね初診の方全員が受けて頂く検査です。
さらに、問診や診察から必要であると判断した患者さまには頭部MRI検査や脳血流検査などの精査目的に基幹型の認知症疾患医療センターへ紹介受診を勧める場合があります。
再診察、再診予約
同日中に結果をお話できるもの(認知機能検査など)に関して再度診察室で医師から説明させていただき、現時点での見立てをお伝えします。
認知症以外の疾患の可能性は他の検査結果をみて総合的に判断することになるので初診時に詳しいお話をすることは難しいことが多いですし、薬物治療を開始するのも各種検査結果をみてからとなります。
再診予約は各種検査結果が出そろうであろう2週間後以降でご案内することが多いです。
所要時間(目安)
病院の滞在時間は概ね1時間半程度かと思います。
受付→問診票記載→診察→検査→再診察→次回予約→会計
と多くのステップがあるので初診はやはり時間がかかります。
診察もお話をよく聞くためには30分程度かかりますので、初診は時間がかかると思って受診するのが無難です。
ご本人が”認知症”という言葉への拒否反応が強い場合、ご本人に一旦退席頂いて検査をして頂いている間に、ご家族とだけでお話する環境を設けたりもします。
本当は家族(介護者)がゆっくり話したいと思っている
『本人の前ではちょっと言いにくいんですが、、』と仰るご家族は少なくありません。
医師から”認知症”の話を聞くときは冷静に聞けても、ご家族に”認知症”と言われると腹を立てるというのも想像できますよね。
こういった診察を行っていると、『介護者が安心して話せる環境がもっと必要だ』と痛感させられます。
そして必要なのは一般的な話ではなく、そのケースにあった個々の寄り添いやアドバイスです。
なぜならば、10人いれば10通りの意向があるためです。そして、どの意向も揺らいで当然なのです。

本人の「自宅にいたい」気持ちを尊重してあげようと、介護を頑張ってきたけれど、、これでは私(介護者)も倒れてしまう。
このまま無理をして介護すべきか、施設へ入所を説得すべきか。。
大切な家族だからこそ、気持ちを尊重してあげたい気持ちと限界を迎えそうな自分との葛藤が日々あると思います。
その気持ちに寄り添うサポートが充足していないと感じています。
差し支えない範囲でコメントやメッセージを頂ければ、それに関する内容での記事作成も考えていこうと思いますので、お気軽にどうぞ。
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