こんにちは。くんぱす先生です。
私は認知症疾患センターに勤務する医師で、認知症予防健診から終末期のお看取りまで認知症の全段階の診療を日々行っています。

このサイトでは、日々認知症診療に携わる医師の立場から、認知症介護をされている方にとって助けとなる内容を発信しています。
診察室では認知症ご本人の診察が中心となってしまうので、介護者のサポートがしたくてサイトを立ち上げました!
「認知症かしら。。」
ふとこんな風に思うことは、ある程度年を重ねてくると誰しもあります。
でもそう思う頻度が増えたり、自分がそう自覚していないのに家族や知人に指摘されたりしたらどこに相談したらよいのでしょうか?
そんなお悩みを持つあなたに向けて、今回は【認知症かも!?と思ったらまずすべきこと】についてお話していきます。
この記事を読むことで、「認知症が心配」と思ったそのときに迷わず行動することができるようになります。
誰が「認知症かも!?」と思っているのか
ご本人の場合
ご本人が「最近もの忘れが増えた気がする」と心配になるパターンです。その方のほとんどが、実際に認知機能検査をしてみると認知症レベルには至っていないことが多いです。
SDC(Subjective Cognitive Decline:主観的認知機能低下)の状態やMCI(Mild Cognitive Impairment:軽度認知障害)の状態であるなど、今後の経過次第では認知症へ進展する場合もあることがあるので、半年や1年毎に症状の経過を追うための定期的な受診をおすすめします。
心配しているのはご本人なので、受診へ積極的ですし、受診することで安心感を得られることもあるため、受診へのハードルは低く問題なくステップを踏んでいけます。
ご本人以外(ご家族、知人など)
難しいパターンは、ご本人には自覚があまりなく(病識がなく)周囲の家族や知人が「あれ?」と異変に気付いているパターンです。
受診に応じてくれる場合はいいのですが、後述するように次のアクションに対して拒否や抵抗を示す方もおられるのが難しいところです。
どんな症状があるのか
ほとんどの場合は【もの忘れ】症状だと思われます。
例えば、
- 何度も同じことを聞いてくる、言ってくる
- 予定や約束を忘れるようになった
- 料理や他の家事を今までのようにこなせなくなった
などが多いのではないでしょうか。
一般の方は”もの忘れ=認知症”というイメージが強いですが、もの忘れの症状は実は認知症以外の治療が可能な病態でも起こりえるのです。
もの忘れ症状を引き起こす、認知症以外の病態とは
実は、もの忘れ症状を引き起こすのは認知症だけではないんです。
他の治療可能な疾患によってもの忘れ症状が引き起こされていないかをはじめに考える必要があります。
- 脳腫瘍、水頭症、頭部外傷後
- 脳炎など中枢神経系感染症
- 腎不全、肝不全などの臓器不全
- 甲状腺機能検査など内分泌機能異常
- 中毒・欠乏症
- 自己免疫系疾患
- その他変性疾患
- うつ病、せん妄など精神疾患
これらは、治療することで認知機能低下などの症状の改善を見込めるため、適切な検査とそれに基づいた治療を早期に行うことが必要です。鑑別するためには問診や身体診察以外に血液検査、頭部画像検査(CTやMRI)、髄液検査など専門的な検査を要することもあります。

まず医療機関受診を
こういった認知症以外の治療可能な病態によってもの忘れ症状が起こっているかもしれないので、「認知症かも!?」と思ったらまず医療機関を受診して検査・判断をしてもらいましょう。
受診すべき医療機関ってどんなところ?と思う方もいらっしゃると思うので、書いておきます。
かかりつけ医がある場合
まずはかかりつけ医がある方は主治医へ相談するのが第一歩です。いつもご本人お一人で受診していて、ご家族がもの忘れ症状の心配をしている場合は受診に付き添って相談してください。あらかじめ電話で受付に事情をお話しておくとスムーズかもしれません。
かかりつけ医が診察した上で、先に述べた検査をその医療機関では行えない場合は紹介状を書いて頂きましょう。相談先はその地域の認知症疾患センターを担う医療機関が最適です。
かかりつけ医がない場合
まずは地域包括支援センターへ相談しましょう。適切な医療機関を紹介してもらえると思います。ここでも、まずは認知症疾患センターが最適だとは思います。
医療機関受診に繋がらない場合
受診するには、ご本人を医療機関へ連れて行かなければなりません。
しかし、「私は認知症じゃない!」「病院は嫌い!」など抵抗を示される方もいらっしゃると思います。この第一歩が意外と難しいことが多いのです。
そんなときの対処法としてのアドバイスをさせていただきます。

地域の認知症健診を利用する。
数年前から各自治体で「もの忘れ予防検診」といった事業が行われています。お住まいの地域でそういったものがないか否かを役所や包括支援センターへ聞いてみましょう。
この事業はほとんどが無料であり、特にかかりつけ医がいない方は受診のハードルが下がると思います。
包括支援センターの職員に説得してもらう。
初期の認知症の方は、家族に対しては感情が高ぶることがあっても他人に対しての礼節は保たれていることが多いため、「地域を回っているんです。お話少し伺ってもいいですか?」と尋ねてきた人に冷たくできないものです。
訪問診療を利用する。
ご自宅に医師が出向いて診察を行う訪問診療をお願いするのも一手です。
医師が実際に出向くことで介入を許してくれる方も多いので、認知症も診ている訪問診療クリニックへ相談してみましょう。
認知症初期集中支援チームへ依頼してもらう。
【認知症初期集中支援チーム】とは、認知症や認知症の疑いのある高齢者やその家族を対象に、医療や介護などの専門職が支援を行うチームです。主な役割は、住み慣れた地域で生活を続けられるよう、適切な医療や介護サービスの利用を支援することです。
2015年度から2017年度末までに、全国のすべての市町村に少なくとも1つの認知症初期集中支援チームが設立されました。
認知症専門医の指導のもと、看護師や社会福祉士、介護支援専門員などの専門職で構成されています。
上記の対策でも、ご本人の拒否が強く介入が難しい場合には包括支援センターを通じて、このチームの介入を依頼することもご検討ください。
そしてここまでのサポートを要する拒否の場合は、それは認知症の周辺症状だと思われますので薬物調整も検討する必要があると思います。併せて医療機関のサポートが必要になると思います。

おわりに
認知症を疑ったときに、まず最初にすべきことについてお話しました。
他の病態を否定するためにも、まずは医療機関の受診をしてください。
その際に、ご本人の説得が難しい場合はここに挙げた具体的な対策を一つずつ試してみて欲しいと思います。
コメント