こんにちは。くんぱす先生です。
私は認知症疾患医療センターに勤務する医師で、認知症予防健診から終末期のお看取りまで認知症の全段階の診療を日々行っています。
診察室では認知症ご本人の診察が中心となってしまうので、介護者のサポートがしたくてサイトを立ち上げました。
このサイトでは、日々認知症診療に携わる医師の立場から、認知症介護をされている方にとって助けとなる内容を発信しています。
施設に入所したときは、「ここで最期まで看てくれる」と安堵しました。
けれど、こうやって病状が悪化して入院が必要になるなんて、、
また家で看ていたときを思い出して不安です。
こちらの病院で最期まで看て頂けるんでしょうか？
また施設を探さないといけないんでしょうか？
今まで施設で過ごせていたのに、入院となって不安ですよね。
「この先どうなるんだろう？」
「また家で看なくてはならなくなるのではないか？」
「今の施設が決まるまでも大変だったのに、また探さなければならないのかしら。」
このようなお気持ちを抱えるご家族も少なくないと思います。
認知症の症状の変化で、今まで過ごせていた場所での療養が難しくなり入院となるケースがあります。
今回は【入院のその先】についてお話していきます。
この記事を読むと分かること
- 入院加療が済んだあとはどうなるのか。
- どのくらいの期間、病院で診てくれるのか。
- また家族が施設を探さないといけないのか。元の施設に戻れるのか。
- 療養も治療もしてくれる最期まで診てくれる病院・施設はないのか。
このような疑問を抱かれるご家族が多いので、1つずつお答えしていきます。
注）地域や病院、施設によって対応は異なります。お住まいの地域ではこの記事の内容が当てはまらない場合は十分に考えられます。一例として参考にしてください。
入院加療が済んだあとはどうなるのか
退院となる。
病状が安定した時点で、患者さんの病状に適した療養環境を探すことになる。
退院とはなりますが、その退院先がそれぞれのケースで千差万別です。
主に考えられる退院先はこちら。
- 自宅
- 新規の介護施設（有料老人ホーム・サポート付き高齢者住宅・グループホーム・介護老人保健施設・特別養護老人ホームなど）
- 元々入所していた介護施設
- 医療療養型病院・介護医療院
ご本人・ご家族の希望、病状・介護度、経済面など総合的に検討する必要があります。
どのくらいの期間、病院で診てくれるのか
基本的に3か月以内
精神科急性期病棟へ入院となった場合は特に”3か月以内”の縛りが厳しくなる。
急性期病棟でなくとも、症状増悪の治療を行う病院で最期まで療養を行うことは難しい。
3か月以内に病状が安定し治療が落ち着いたとしても、退院先がなければ退院できません。
認知症疾患医療センターとして、一般病床と違うのはここかなと思います。
一般病床で身体合併症（例えば肺炎など）の治療が終了すると、半ば強制的に退院となります。元の施設に戻ったり、自宅に帰ったりと病院側で退院先の調整に時間をかけることはしません。万が一、調整しないと退院先がない患者さんの場合はそういった調整目的で入院できる亜急性期～慢性期病棟のある病院への転院を勧められると思います。
一言で”病院”といっても、病院・病棟によって住み分けがあるのです。
急性期病棟では”燃え盛る症状の炎の鎮火”を行います。鎮火された後、日常生活が送れるように整えるところまでは急性期病棟では行いません。急性期病棟は次から次へと他にも鎮火すべき炎があるからです。
詳しくはこちらの記事でお話していますのでまだご覧になっていない方はどうぞ。
その病院・病棟によっていつまで入院が可能かは変わってくるので直接聞いて頂くのが間違いないです。
また家族が退院先の施設を探さないといけないのか
病院の相談員と共に探す。
家族に任せっきりにはならないのでご安心を。
自宅で療養されていたときに担当ケアマネージャーがついていた方はイメージしやすいと思いますが、入院後も家族を導く相談員という職種がいます。
正式には、精神保健福祉士といいます。国家資格を有する専門職です。
本人やその家族の相談にのって助言や指導を行なったり、利用可能な福祉サービスの紹介やその手続きをサポートしたりします。
特に認知症の分野では、ご本人の病状や介護度により検討すべき退院先の施設が変わってきます。ご家族でその判断を行っていくことは難しいため、病院側から適切であろう施設の種別を提案しています。
そのため、退院先を決めていくときにご家族にのみ任せっきりで放任ということはありませんので安心してください。
療養も治療もしてくれる最期まで診てくれる病院・施設はないのか
あります。
ただ、病状・介護度によりその病院への入院が適切か病院側で判断する。
さらに、できる医療行為には範囲がある。
具体的には”医療療養型病院”や”介護医療院”があたります。
持続的に今後も医療行為が必要な患者さんや精神症状が治療により安定しきらない患者さんが療養するための医療機関です。
こういった患者さんは介護施設での療養対応が難しいため、医療療養型病院や介護医療院で療養の受け入れをしています。
看取りやターミナルケアの対応も行っているため最期まで療養することが可能です。
慢性期の療養へ対応した病院であるため高度な急性期治療や精査は行えませんが、今後も継続が必要な医療処置（喀痰吸引、胃瘻、補液、酸素投与など（＊病院により対応可能範囲は様々です。））が可能です。
まとめ
認知症患者さんの病状が変化したとき、入院したその先はどうなるのかについてお話しました。
医療機関はそれぞれ役目によって住み分けが成されており、急性期のみを診る病院、その後の退院支援まで含めて診る亜急性期病院、最期まで診ることができる慢性期病院など様々です。
介護施設の選定なども併せて、精神保健福祉士という専門職の相談員が患者さんの病状やご家族の要望に沿って相談にのることができますので、ご家族だけで悩まなければならないということはありません。
ご参考になれば嬉しいです。
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