抑うつ ー周辺症状④ー

症状の話

こんにちは。くんぱす先生です。

【介護が難しくなる症状-周辺症状とは―】でお話した症状を、日々認知症診療をしている医師の立場から、一つずつ詳しくお話していきたいとおもいます。

今回は【抑うつ】についてです。

認知症における抑うつ症状とは

「なんだか最近外出しなくなった」

「今まではテレビや新聞を好きでよく見ていたのに興味を示さなくなった」

「朝、起きてこなくなった」

認知症介護をしていてこんなことはありませんか?

もしかしたら認知症の周辺症状の一つの【抑うつ】症状かもしれません。

認知症分野ではこういった無関心、意欲低下を【アパシー】と表現することもあり、うつ状態とアパシーの区別は臨床現場でも難しいことが多いです。

アルツハイマー型認知症ではこういった意欲低下や興味関心の低下が初期から認められることが多く、初発症状ともなり得ます。また、レビー小体型認知症でも過半数の割合で抑うつ症状をきたすともいわれています。

どうして抑うつになるのか

ここでもやはり、認知症の進行による認知機能低下をご本人が自覚することで不安・焦燥感を生じることが根底になると考えられます。

「今までできていたことができない」

「もの忘れがひどくなって周りに迷惑をかけている」

といったネガティブな感情から、外出しなくなったり知人と会わなくなったり塞ぎ込みがちになることで、さらに抑うつ傾向となるという悪循環となります。

対応

非薬物療法

回想法

アメリカの精神科医ロバート・バトラーにより創始されたとされ、認知症の人の過去の思い出や体験を振り返り、他者と共有することで脳を活性化させる心理療法です。

回想法では、昔の写真や音楽、風景などをきっかけに、本人が思い出すことを促します。また、本人が思い出す体験や思い出を語り合うことで、気持ちの安定やコミュニケーションの活性化にもつながります。

聞き手は傾聴に徹して、ご本人が語ることへ相槌をうち、お話することを否定したり訂正したりしません。

こういった試みは地域の認知症カフェなどで度々開催されています。ご興味ある方は是非、地域の包括支援センターなどに聞いてみてください。

音楽療法

音楽の力を借りてリラックスすることで、不安・焦燥感を和らげ脳の活性化するなどアパシーに効果があるといわれています。

よく歌った歌謡曲でもクラシックでもジャンルは何でも構いません。

意欲低下しているときには、思わず身体を揺らしたくなるような選曲でもいいと思います。

ご本人の活動度によっては音楽を聴くだけではなく、簡単なダンスなど身体を動かしてみたりタンバリンや鈴など楽器をリズムに合わせて奏でてもいいと思います。

やはり音楽は年齢に関わらず、いつも人に寄り添ってくれる存在ですね。

薬物療法

非薬物療法を3か月程度継続してみても改善が乏しい場合や、程度が重度で食事摂取ができなくなるなどの場合は薬物療法を考えていいと思います。

アパシーの場合は、抗うつ薬を投与することで副作用のためふらついて転んだりすることがあるため慎重に検討しなければなりません。抗うつ薬よりも脳賦活薬やコリンエステラーゼ阻害薬の抗認知症薬を用いることが多いです。

くんぱす先生

認知症疾患センターに勤務する総合内科専門医。
日々の認知症診療で、患者さんを支える家族などのサポートが足りないことを痛感し、ブログやYouTubeでの発信を決意。
現場で働くからこそ伝えたいこと、お話したいことを発信。
保険診療では手が届かない「サポータ―のサポート」を日々診療にあたる医師目線で行うサイト。

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