みなさんは”認知症の症状”といわれて、どんなものを頭に思い浮かべるでしょうか。
きっと大抵の方が「もの忘れ」を思い浮かべることと思います。
そう、もの忘れは医学的には「認知機能障害」といい、認知症の【中核症状】(芯を成す症状)です。
実は、認知症の症状にはこの【中核症状】以外に、【周辺症状】という多岐に渡る症状もありそちらの方が介護をする上でとても厄介な症状なのです。
今回は、その【周辺症状】に焦点を当ててお話したいと思います。
【中核症状】とはどんなものか
まずは、芯を成す症状【中核症状】について簡単に説明します。
一言で申し上げると「認知機能障害」が【中核症状】にあたります。
「認知機能障害」とは”認知”する機能が低下しているということなので、思考・判断・推理・適応・問題解決の能力が低下することと言い換えられます。
もっと平たく言うと、自分で物事を考えて、根拠や目的をもって行動したり、問題が生じたときにどうすればいいかを考える能力です。
【周辺症状】とはどんなものか
では、【周辺症状】とは何か。【行動・心理症状】と呼ばれることもあります。
【中核症状】以外の症状のことですが、具体的に挙げてみると以下のような症状を指します。
- 徘徊(はいかい)
- 妄想
- 易怒性(いどせい)・興奮
- 抑うつ
- 睡眠障害
- 不安・焦燥感(しょうそうかん)
- 幻覚
中核症状以外なのでその症状は多岐にわたり、ここに全てを挙げることはできません。
少し専門的な用語が並んでしまったため分かりやすく具体例を挙げてみます。
徘徊
目的なく彷徨う症状です。不安や焦燥感(しょうそうかん)があることが多く、帰宅願望による徘徊が多く見受けられます。
家から出ていってしまい、家に戻れず迷子になったり事故の心配があります。
妄想
認知症において最も知られているのが「もの盗られ妄想」です。
「財布が見当たらない。嫁が盗ったに違いない。」と、置いた場所が分からなくなった不安や戸惑いから妄想に発展し、介護者を責めてしまうことがあります。
易怒性・興奮
些細なことでも怒りっぽくなり、口調が荒くなったり、物にあたったり、暴言・暴力的行為へ繋がる症状です。
介護ケアに抵抗を示すことが多く、介護者を悩ませる症状です。
抑うつ
気分が落ち込んだり、食欲がわかない、活気が出ないなどの症状です。
ふさぎ込んでしまい、外出の機会が減ったり、趣味に全く興味を示さなくなる、TVや新聞を見なくなるなどの行動がみられます。
老年期うつ病と認知症の周辺症状の鑑別は大変難しいです。
不眠
中核症状の「見当識障害」による昼夜の区別がつかなくなることとも関連が深い症状です。
睡眠と覚醒のリズムがつきにくくなり十分に身体の休息がとれないため、他の周辺症状を引き起こしやすくなります。
不安・焦燥感
認知機能障害の進行により、できたことができなくなる、分かっていたことが分からなくなるなどの変化を自分でも感じるため、不安やソワソワとした感情になりやすくなります。
これらの感情から徘徊や易怒性・興奮へ発展するなど、様々な他周辺症状のベースに不安・焦燥感がある場合が多いです。
幻覚
幻視や幻聴をまとめて幻覚と呼びます。
レビー小体型認知症では特に具体的な幻視を認めやすいと言われています。(小さい虫や小さな子どもなど)
幻視や幻聴により妄想に発展したり、不安・焦燥感を生じやすく精神症状の変動をきたしやすいです。
日常生活に支障がでやすい
周辺症状の内容をみていくとお分かりのように、これらの症状により日常生活に支障が出やすくなります。
これらの知識を介護する側が持っているか否かで、症状の捉え方が大きく変わるため知っておくことがとても大切です。
介護負担がグッと増す
ケアに抵抗されたり、目が離せなくなる、夜ゆっくりと寝られないなど、周辺症状の出現により介護する側への負担がグッと大きくなります。
周辺症状の多くは薬の力を借りるなどの医療介入が必要となります。
これらの知識を持っておくことで「もしかしたら周辺症状かもしれない」と介護者が気付くことができれば受診を早めにできるかもしれません。

周辺症状を和らげるには
非薬物療法
認知症ケアにおいて、薬以外の方法が必ずベースになくてはなりません。
残念ながら、薬のみで支障なく日常生活を送ることはとてもハードルが高いことなのです。
できることは自分でして頂けるように、ご本人の病状に環境を合わせていくという工夫が必要です。
ご本人の病状をよく観察し、何ができてどんな工夫やサポートが必要かを一緒に考えることが我々サポーターに必要なスキルだと思います。是非プロの力を借りて欲しいと思います。
薬物療法
薬に関しては別記事にまとめる予定です。
記事ができたらこちらにリンクを貼りますね。お待ちください。
まとめ
日々の介護を大変にさせている症状、それは【周辺症状】かもしれません。
思い当たることがあれば是非、「地域包括支援センター」などの相談機関もしくは「かかりつけ医」「認知症疾患センター」へご相談ください。
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