こんにちは。くんぱす先生です。
私は認知症疾患医療センターに勤務する医師で、認知症予防健診から終末期のお看取りまで認知症の全段階の診療を日々行っています。
診察室では認知症ご本人の診察が中心となってしまうので、介護者のサポートがしたくてサイトを立ち上げました。
このサイトでは、日々認知症診療に携わる医師の立場から、認知症介護をされている方にとって助けとなる内容を発信しています。

認知症治療病棟への入院には、季節性を感じることがあります。
それぞれの季節でこんな症状での入院が増えるな、と感じる現場からのお話をしていきたいと思います。
今回は”春”のお話です。
春の変化
介護者の生活の変化
日本では年度の切り替えが春なので、社会の動きが春に多いですよね。
介護されているご家族の環境が変わりやすいのが”春”です。
そのため、転勤や進学など介護者家族の環境変化があり、その変化に介護者が対応することに忙しくなります。
周囲の人の忙しさや混乱した状況は認知症の症状にも影響を及ぼし、今まであった症状が悪化したり新たな症状が出てくる可能性があります。
特に夜間不眠や不安焦燥感の悪化などが考えられます。
精神症状が変動しやすい
春は気温の変化や生活の変化などにより、うつ病やメンタル不調が増加しやすい季節といわれています。精神科界隈ではあるあるのお話です。
環境の変化ももちろん影響していると思われます。
今まで安定した症状も変動が大きくなったり、新たな症状が出現する季節なのです。
気候の変動による体調変化
高齢者は気候の変動に弱いことが多いです。
皮下脂肪が少ないことで気候の変動に伴う外気温の変化に左右されやすく、免疫力も低下しているため体調を崩しやすいのです。
体調を崩すことで、怠かったり苦しかったりとしんどい病状となると精神症状も影響されます。
以上、春になるとこんな変化により認知症症状が変化しやすいです。
- 介護者の生活の変化
- 精神症状が変動しやすい季節
- 気候の変動が激しく体調を崩しやすい
これらの春の変化により、認知症症状に変化がでて在宅での介護や施設での対応が困難になるケースが散見されます。
春に悪化する認知症症状ランキング
以下、くんぱす調べです。(エビデンスはありませんのでご注意ください。)
- 不安・焦燥感による徘徊
- 抑うつ症状による摂食量低下
- 転倒による骨折後、在宅介護に戻れなくなる
もちろん他の時期でも認められるものですが、これらの症状が春には多くなる印象があります。
不安・焦燥感による徘徊
暖かくなり外への散歩が増える季節です。
介護者の生活環境の変化などから周囲がざわつくことも相まって、不安焦燥感が高まりやすい時期でもあります。
介護者の目が行き届きにくくなる時期に徘徊が増えることで、在宅介護が難しくなるケースが増えます。
抑うつ症状による摂食量低下
春は気温の変化や生活の変化などにより、うつ病やメンタル不調が増加しやすい季節といわれています。
認知症の方も例外ではなく、抑うつ症状が悪化したり新たに出現したりします。
食事や飲水を十分にしてくれないと在宅でも施設でも脱水の懸念があるため、入院相談に至ります。
転倒による骨折後、在宅介護に戻れなくなる
徘徊の話と通じますが、春になり暖かくなって活動量が増えてくることで転倒による事故も増えます。
運悪く骨折してしまい、手術をしたものの術後リハビリが積極的にできないなどの理由で車椅子となってしまうことは少なくありません。
車椅子では自宅に戻ることが難しいご家庭が多いので、骨折を契機に施設入所を検討する運びとなるケースが多くなります。
以前の記事(以下参照)でお話したように、入院をきっかけに施設を打診し始めると思いのほか入院が長期化するため急性期病院では入院継続が難しくなります。(長期では入院できない。)
そこで、施設入所までの退院調整を行うため亜急性期病院や慢性期病院への転院の後、入院を継続することとなります。
おまけ
症状の変化以外にも、行政の手続きなどでも年度の切り替わりにより影響がある場合があります。
- 要介護認定結果
- 行政を介した特別養護老人ホームへの入所申請
これらは年度の切り替え時期には他の時期よりも遅くなる傾向を感じます。
手続きをお考えの方は、春になる前に済ませることをお勧めします。
まとめ
四季により入院の理由が変わってくることがあります。今回は”春”に関してお話しました。
在宅介護をしていても、施設に入所していても、精神症状の変動や周囲のバタつきによりご本人の病状にも変化が及ぶことがあります。
私たちも季節や気候の変化によって体調や気持ちの面での変化を感じることがあると思います。
認知症に関しても同様で変動がありますので参考にしてみてください。
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