こんにちは。くんぱす先生です。
私は認知症疾患医療センターに勤務する医師で、認知症予防健診から終末期のお看取りまで認知症の全段階の診療を日々行っています。
診察室では認知症ご本人の診察が中心となってしまうので、介護者のサポートがしたくてサイトを立ち上げました。
このサイトでは、日々認知症診療に携わる医師の立場だからこそ話せる、認知症介護をされている方にとって助けとなる内容を発信しています。

『家での介護が難しく、介護施設に入所を依頼したのに断られた』と入院相談に至るケースがあります。
具体的にどんな症状があると施設への入所を断られてしまうのかお話します。
介護施設で対応困難な症状とは
高齢化に伴い、年々さまざまな介護施設が新規開設されています。
一言で【介護施設】といっても要介護度により対応可能な施設は変わってきます。
ただ、どんな種別の施設でも対応困難となる症状にはおおむね共通点があります。
それはどんな症状なのかについてお話していきます。
制止のきかない徘徊
入所後に施設から勝手に出ていってしまうような徘徊や、他入所者さんのお部屋に頻回に入ってしまうなどの迷惑行為があると対応が難しいことが多いです。
基本的には徘徊を抑える薬はありません。
徘徊の原因となり得る不安焦燥感に対しては向精神薬の調整で落ち着く可能性がありますが、非薬物療法で環境を工夫する、作業療法を取り入れるなどの対応が必要となります。
上記の対応でもマンツーマン対応で見守りを要するような徘徊がある場合は入所が難しいと思われます。

転倒・転落の危険が高い行動
介護施設では基本的に身体拘束や隔離など行動制限を行うことができません。たとえそれがご本人の安全を守る意義であっても、です。
そのため、明らかに歩けない病状なのに歩こうとし転倒してしまう方や、ベッドや車椅子からの転落の危険が高い方は安全を守るために見守りを強化する必要があるので受け入れを断られるケースがあります。
こういった事故防止のために離床センサーなどの資材を用いて施設側も懸命に対応していますがマンパワーの限界もあるので、バランスをみて入所者判定をしているところがほとんどです。
大声
いくら個室であっても大きな声は廊下に響きます。
他入所者さんの睡眠を妨げたり、気持ちを動揺させてしまうような大声がある方はどの施設でも対応が難しいでしょう。
認知症の患者さんで断続的な大声がある場合は向精神薬の調整が必要となることが多いです。
そして大声を改善する薬物調整は難渋することが多く、大声を改善する程度の薬剤調整をすると傾眠がちとなり鎮静がかかりすぎてしまうなど、ちょうどいい調整がなかなか難しい症状といえます。
他入所者やスタッフへの暴言・暴力的行為
介護施設は療養施設であるため、平穏に過ごす生活空間となります。
集団で生活するため、他入所者への迷惑行為がある場合は施設で過ごすのが難しくなります。
食べない、飲まない
介護施設では点滴や酸素投与などの医療行為ができないことが多いです。
施設の種別によりますが、一時的に緊急時のみ対応できたとしても治療は病院へ入院し行うことが基本となります。
十分な食事や飲水ができていない場合、点滴で水分を補い原因精査を行うなどの内科的加療が必要であるため直接施設へ入所するのは難しいです。
しかし、老衰や認知症の終末期で医療行為を希望されないご意向が定まっている場合はその限りではありません。

介護施設に入所できない場合どうするか
自宅での介護が難しく、施設への入所も困難な事例は入院加療の相談をすることとなります。
こちらの記事でお話したように、認知症の症状での入院を受け入れている病院の多くは精神科病院です。
入院の必要性に関しては病院の医師が判断することが多く、施設入所を難しくしている症状に関して入院したのち観察した上で、必要であれば向精神薬などの薬剤調整を行います。
施設への入所が目標の場合は、入所が可能な状態に症状が軽減することを目標に治療・ケアを行います。

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