認知症の外来通院はどの頻度でしますか?【お悩みQ&A】

お悩みQ&A

こんにちは。くんぱす先生です。

私は認知症疾患医療センターに勤務する医師で、認知症予防健診から終末期のお看取りまで認知症の全段階の診療を日々行っています。

診察室では認知症ご本人の診察が中心となってしまうので、介護者のサポートがしたくてサイトを立ち上げました。

このサイトでは、日々認知症診療に携わる医師の立場から、認知症介護をされている方にとって助けとなる内容を発信しています。

実際に、認知症で外来通院するとどのくらいの頻度で通うのかしら?

かかりつけのお医者さんのところにも通っているから大変なのよ。

くんぱす先生
くんぱす先生

そうですよね。

今まで通っていたかかりつけ医と別のところで認知症の受診をするとなるとダブルで通うのは大変ですよね。

今回は、初診以降の通院に関してお話します。

【初診までの動き】【初診で行うこと】に関しては過去にお話しているのでご覧ください。

初診のあとはどうなるのか

認知症の程度や症状により変わってくるのでパターンに分けてお話していきます。

認知機能低下がない場合

初診時に伺ったお話や認知機能検査など諸検査の結果、特に困った症状や所見がない場合は1年後程度を目安に再診としています。

再診までの間になにか症状がでてきたり気になることがある場合はその時点で予約を取っていただいています。

「何かあったら相談してね。」というスタンスです。

それまでは今までのようにかかりつけ医で診て頂いてください。

軽度認知機能低下の場合

認知症の初期段階なのか、軽度認知障害(認知症予備軍)なのかはっきりしない程度の方は半年~1年後程度を目安に再診としています。

この場合も、それまでに気になる症状が出てくる場合はその時点で来ていただくようにお話しています。

ご紹介頂いたかかりつけ医がいる場合は、その医療機関へ受診結果を共有しています。

ハンドブックのご紹介

健常~軽度認知障害~認知症初期の方々には国立長寿医療研究センターが作成した『あたまとからだを元気にするMCIハンドブック』をご紹介しています。

無料でウェブ版を見ることができますが、手元に冊子として置いておきたい方には販売も始まったようです。→こちら。ご自身で印刷することもできます。

パソコンやタブレットなどの利用が問題ない方はウェブ版できれいに見ることができるので十分かと思いますが、ご高齢のご本人が読むには冊子の方がいいかも?という方はご検討ください。

Q&Aスタイルで現在分かっている研究結果を基に、予防に効果があるとされているものを生活習慣・病気、運動、食事、社会参加、認知機能訓練、生活習慣(難聴など)、家族向けの話など多岐に渡って解説されています。

”知らないこと”は不安につながりやすいので、ご本人・ご家族ともに認知症について学ぶには読みやすいハンドブックだと思います。

中等度認知機能低下の場合

日常生活に支障をきたす症状がない場合

抗認知症薬を開始した場合は、開始後の様子をみるために、はじめは1か月程度で受診して頂いています。

抗認知症薬も副作用が出ていなければ維持量まで少しずつ増量したりと調整がしばらくあります。

維持量に達して、安定して日常生活を過ごせている場合は、3か月毎の通院が一般的かと思います。

しかし、内服調整だけではなく介護者からの相談や老々介護の方などは生活を見守る意味でもう少し頻度を上げて外来に来ていただくこともあります。

ご本人・ご家族のご希望に合わせて調整しています。

日常生活に支障をきたす症状がある場合

抗認知症薬のみならず、抗精神病薬の調整を行う場合はより有害事象の評価や症状の変化を診る必要があるため2週間後程度で再来して頂いています。

症状が安定してきたところで、1か月、2か月、3か月と通院頻度をあけていきますが、一度安定したと思っても今後は過鎮静傾向に傾いてしまったりと抗精神病薬の介入をしている方は比較的細めに診ていかないといけません。

そのため、1・2か月毎には外来通院して頂いた方が安全かと思います。

中等度認知症になると、介護保険サービスの導入を検討されるケースが増えると思いますので、要介護認定の申請のために主治医意見書を記載したり、地域包括支援センターや在宅ケアマネージャーとのやり取りも出てくるかと思います。

必要に応じて、外来診療とは別に関係者(本人・介護者・在宅ケアマネ・主治医・病院相談員など)で会議を行うケースもあります。

重度認知機能低下の場合

ほとんどの場合で日常生活に支障のある症状で困っておられ、介護負担も大きくなっています。

介護保険サービスの介入をすでにされているケースが多いと思われます。

在宅介護が破綻してから動くのではなく、少し先の予測を立てながら今後入所しうる施設の検討や介護者の疲弊度を察知する必要があります。

通院頻度としては在宅介護の状況を把握する意味でも、1か月毎が多い印象です。

ご本人の通院が難しいメースも少なくないため、状況に応じて訪問診療へ切り替えるなどの相談もします。

在宅介護が破綻する前に

一番避けたいのは、施設入所やサービスの介入が後手に回ることで、「施設入所が受け入れられない」「通所サービスも受けられない」状態となり”入院しか手がない”状態になることです。

別の記事でお話したように高齢者の入院はいいことばかりではありません。

可能な限り、入院せずに過ごせるならばそれがいいと思っています。

そのためには、後手に回る前に前もって今後の予測を立てて行動しておくことが求められます。

入院相談に至る7割程度は、『もっと早く介入できなかっただろうか、、』と考えさせられるケースがあります。

そういったケースの入院相談は得てして”なるべく早く”の入院を希望されており『今日明日で入院できませんか?』と相談されることも少なくありません。

介護者が突然想定外に入院することになった、など予測不能な事態ならともかく予想できていた在宅介護破綻が多いのが現状です。

結果論なので、『入院はしょうがない』ケースももちろんありますが、在宅介護をギリギリまで粘っているケースが多いのです。

介護者はおそらく『そうするしかない』と土俵際でなんとか持ちこたえていらっしゃると察しますが、我々専門家が様々な選択肢を事前に提示してあげ、『このラインまで来たらこの施設への入所を打診しましょう』と具体的に話を詰めておく必要があると思っています。

なぜなら、一般の方は”どこまで頑張ったらいいのか”が分からないのです。『自分の親のことだから』『仕事を辞めても介護するのが責務』とさえ思っていらっしゃる方も中にはいらっしゃいます。

まとめ

初診の後の通院頻度について、重症度に分けて目安をお話しました。

通院先によって対応は異なって当然なので、あくまで一例としての参考に留めてくださいね。

内服調整をする場合は通院頻度は多めにこまめに診る必要があるよ、ということが分かっていただけたら良いとおもいます。

2か所に通院する負担が大きいな、と感じる場合は迷わずに医師へ相談してください。

かかりつけ医で経過を診て頂ける場合は、できるだけ元々通っていらっしゃる医療機関へお戻ししています。その場合は診療情報提供書というお手紙で病状を共有しています。

そして認知症を診る医師の役割は大きく次の2つだと思います。

① 病状に合わせた内服調整

② 在宅介護の状況を把握し、先回りして後手に回らないよう具体的助言をする。

地域包括支援センターや在宅ケアマネージャーなどの支援者も②に関しては同じです。

介護者の抱える”ご本人の日常生活”は24時間365日です。

その中で、医療や介護サービスが担える部分はたったの数時間のみです。

残りのほとんどの時間を介護者が抱えるわけなので『医療に繋がっていれば安心』というのは慢心だと思います。

くんぱす先生

認知症疾患センターに勤務する総合内科専門医。
日々の認知症診療で、患者さんを支える家族などのサポートが足りないことを痛感し、ブログやYouTubeでの発信を決意。
現場で働くからこそ伝えたいこと、お話したいことを発信。
保険診療では手が届かない「サポータ―のサポート」を日々診療にあたる医師目線で行うサイト。

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