こんにちは。くんぱす先生です。
私は認知症疾患医療センターに勤務する医師で、認知症予防健診から終末期のお看取りまで認知症の全段階の診療を日々行っています。
診察室では認知症ご本人の診察が中心となってしまうので、介護者のサポートがしたくてサイトを立ち上げました。
このサイトでは、日々認知症診療に携わる医師の立場から、認知症介護をされている方にとって助けとなる内容を発信しています。

『精神科病院って聞くと、なんだか構えちゃうなぁ、、』
きっと介護されるご家族の多くはこんな思いを抱いていらっしゃるのではないでしょうか?
認知症の入院を受け入れているのはほとんどが精神科病院
入院が必要な症状がある、自宅や施設では過ごせない症状がある、ということはその症状に対して適切な治療を行う必要があります。
以前【周辺症状】に関してお話しましたが、これらの症状を軽減するために向精神薬といった自律神経の調整を行うような薬の調整が必要になります。
そして、その向精神薬の調整の専門は【精神科】です。
そのため、入院を要するような症状がある認知症の入院は精神科病院で精神科医が受け持つことがほとんどです。
精神科病院と聞くと、拒否反応を示す家族
年代的にも、統合失調症が昔「精神分裂病」と呼ばれていた時代の患者層なので、「精神科病院に入院」というとネガティブなよくないイメージを持たれる患者さんやご家族が稀にいらっしゃいます。
けれど、現実的には一般病棟で認知症の症状の治療目的に入院を受け入れることは難しい背景があります。
認知症症状を一般病床で診るのは困難
一般病床には身体的な治療のために入院されている方が大勢います。
自分のベッドで過ごし、夜間は寝て、点滴他医療行為を受けている患者さんたちです。
そこへ、徘徊や暴力、不眠、大声などの症状がある認知症患者さんが入院してきた場合、患者さん同士の安全を守る保障がありません。
他の部屋に間違って入らないように必要以上に行動制限(身体拘束や隔離など)が成されたり、それにより認知症患者さんはよりせん妄(一過性の意識混乱)を起こしやすく病状悪化につながります。
そのため、認知症患者さんを守る意味でも精神科対応の可能な精神科病院への入院が現実的です。
精神科病院への入院は法律で定められている
精神科の入院には、精神保健福祉法で『任意入院』『医療保護入院』『応急入院』『措置入院』(緊急措置入院)の入院形態が定められています。
【任意入院】患者さんご本人が入院治療の必要性を理解・納得し、入院に同意される場合
【医療保護入院】ご本人のご理解が難しく、精神保健指定医の診察のもと、配偶者、親権者、扶養義務者、後見人または保佐人のいずれかの者の同意により、本人の同意を得ることなく入院させる場合
詳しくは日本精神科病院協会のHPをご参照ください。
認知症の入院においてはこの2つの形態の入院を行うことがほとんどですが、厚生労働省により認定された精神保健指定医(精神科医)が上記の入院の判断を行います。
精神障害の症状が重くなると、自分が病気であるとの認識が持てなくなり、治療の必要性を説明しても理解できなくなる場合があります。
そのような時でも、患者さんが保護され、適切な医療を受けられるように法律で定めてられているのです。
認知症疾患医療センターは精神科病院であることが多い
これらの理由で、認知症を診る(特に入院加療)のは精神科病院となっています。入院病床を持つ認知症疾患医療センターは精神科病院が担っている理由です。
認知症患者さんの人権を守る意味でも適正であると思います。
各都道府県で認知症疾患センターを検索することができます。(東京都認知症疾患医療センター一覧)

まとめ
認知症の症状が悪化したことで、今まで縁のなかった精神科病院への受診や入院を打診されることもあると思います。
精神科が主に認知症の治療を行っているのには、認知症患者さんの人権を守るためなど理由があるのです。
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