耳が遠いと認知症になりやすいですか?【お悩みQ&A】

お悩みQ&A

こんにちは。くんぱす先生です。

私は認知症疾患センターに勤務する医師で、認知症予防健診から終末期のお看取りまで認知症の全段階の診療を日々行っています。

このサイトでは、日々認知症診療に携わる医師の立場から、認知症介護をされている方にとって助けとなる内容を発信しています。

診察室では認知症ご本人の診察が中心となってしまうので、介護者のサポートがしたくてサイトを立ち上げました。

くんぱす先生
くんぱす先生

【認知症の予防】について今現在分かっていることをお話していきます。

介護をしながら、「自分も将来認知症になるのかな」と心配になる方は多いです。

人は、”知らない””分からない”ことに不安や恐怖を感じます。

認知症について少しずつでも知っていくことでむやみに恐れず、一歩一歩進んでいくことができると思うのです。

今回のテーマは【耳の聴こえと認知症】についてです。

最近なんだか、前よりも聞こえにくくなったみたい。

こんなお悩みはありませんか?

「歳だからある程度はしょうがない」「補聴器は年よりくさい」と放っておかないことをおすすめします。

なぜなら、耳の聴こえは認知症のなりやすさにも関係しているといわれているからです。

難聴と認知症の関係

最近の海外での研究成果からは、中年期(45歳~64歳頃)に難聴があると高齢期(65歳~)に認知症のリスクがおよそ2倍上昇するというデータが発表されています。(Livingston G, et al. Lancet. 2017)

日本でも愛知県にある国立長寿医療研究センターで行われた調査で、難聴がある患者さんでは、もの忘れの自覚不安感、焦燥などの精神的な症状を感じる割合が多く、抑うつ気分がある患者さんも認められたそうです。国立長寿医療研究センターHP健康長寿ナビ「耳が聞こえにくいと認知症になりやすい?」より)

”難聴”を自覚も、6割が受診しない現実

一方で、耳が聞こえにくいことを自覚していても60%余りの人は医療機関を受診していないことも他の調査で報告されています。

調査は「日本補聴器工業会」が2022年の8月から9月にかけて、1歳から95歳までのおよそ1万4000人を対象にインターネットで実施したものです。JapanTrak 2022 調査報告

受診した人や補聴器を利用している人の割合は、同様の調査が行われたイギリスやフランスなど他国と比較しても低かったそうです。

なぜ補聴器を使わないか

家族からは『話がなかなか通じない』と文句を言われるけど、自分はそんなに困っていないんだよ。

それよりも補聴器をつけることで、年寄り扱いされるのが嫌なんだ。

先ほどの調査結果の中でも、補聴器を使わない人の理由が次のようにでています。

  1. わずらわしい(57%)
  2. 難聴がそれほどひどくない(40%)
  3. 補聴器を使用しても元の聞こえに戻らない、補聴器を購入する経済的な余裕がない(38%)

補聴器は確かにお高いイメージがありますよね。

補聴器と集音器

実は、Amazonなどで販売されているほとんどは「集音器」に分類されます。

「補聴器」と「集音器」なにが違うの?

平たく言うと、”医療機器かそうじゃないか”の違いです。

【補聴器】厚生労働省から認定を受けている医療機器

【集音器】音を増幅させる音響機器

機能も違うので価格帯もかなり変わってきます。

一言で「聞こえにくい」といっても、どんな音が聞こえにくいのか、どのくらい聞こえていないのか、など難聴の程度や質は人によりさまざまです。

よく聞こえると感じるようになるためには、その人の聞こえの状態をしっかり把握し、その人の聞こえに合わせて細かく補聴しなければなりません。

管理医療機器である『補聴器』は、難聴者のニーズに応えられるよう、使用する人に合わせて調整できる機能が搭載されています。その人に合わせて調整を重ねることを前提としています。

一方、『集音器』は一般的には、使用する人に合わせて細かく調整する前提で製造された製品ではありません。

音量調節等の機能やノイズキャンセリング機能などは搭載されている製品が多いですが、個々の人の聴力や聞こえの状態に合わせて調整しながら使用する製品ではないことも多いのです。

補聴器?集音器?どっちにしたらよいのか

まずは、”聴こえにくさ”の質や程度を診てもらいましょう。

聴こえに関して診察をしている耳鼻咽喉科を受診することをおすすめします。

その上で、難聴の程度やどんな音が聞こえにくいのかを診断してもらいましょう。

その結果をもとに、『集音器』でも対応可能な範囲か、『補聴器』でないと改善が期待できなさそうかを医師と一緒に相談したらよいと思います。

『集音器』のほうが安い上、デザイン性も高いものが多いので、「できれば集音器がいいな」と感じる方も少なくないと思います。その気持ちを医師にも伝えてください。

まとめ

  • 難聴があると認知症発症リスクは2倍
  • 自覚していても未受診が多い
  • 難聴の程度と質を調べてもらおう
  • 『補聴器』か『集音器』か検討

いかがでしたでしょうか。

「そういえば、以前より聞き取りにくくなったかもしれない」と感じていらっしゃる特に45歳以上の方、まずは受診してみてください。

くんぱす先生

認知症疾患センターに勤務する総合内科専門医。
日々の認知症診療で、患者さんを支える家族などのサポートが足りないことを痛感し、ブログやYouTubeでの発信を決意。
現場で働くからこそ伝えたいこと、お話したいことを発信。
保険診療では手が届かない「サポータ―のサポート」を日々診療にあたる医師目線で行うサイト。

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