こんにちは。くんぱす先生です。
【介護が難しくなる症状-周辺症状とは―】でお話した症状を、日々認知症診療をしている医師の立場から、一つずつ詳しくお話していきたいとおもいます。
今回は【不眠】についてです。
不眠で悩む高齢者は多い
認知症患者さんに限らず、高齢になると睡眠障害で悩む方は増えます。
メラトニンという睡眠ホルモンと呼ばれるホルモンの分泌量が低下するのも一因といわれています。さらに、深い睡眠のノンレム睡眠が減り、浅いレム睡眠が増え、眠りの質が浅くなりやすいともいわれています。
認知症患者さんの場合、見当識障害という時間の判断がうまくできなくなるという症状が出ることで、昼と夜の区別がつきにくくなります。そのため、夜暗くなってきたという環境の変化を認識することが難しく、入眠しにくくなります。
タイミングによる不眠の分類
どのタイミングで眠れないのかによって環境の工夫や使う薬が変わるので、まずはどのタイミングの眠りに問題があるのかを考えます。
- 入眠困難
- 中途覚醒
- 早朝覚醒
1.入眠困難
寝床に入ってから寝付くまでに時間がかかり、「なかなか眠れない、、」とストレスを感じる場合を指します。
2.中途覚醒
寝付くことはできるけれど、途中に1回~複数回目が覚めてしまう場合を指します。
一度起きてしまうと、再入眠が難しく「そのまま朝まで眠れなかった、、」ということも少なくないです。
3.早朝覚醒
自分の予定していた起床時間よりも前に(目覚ましの設定時刻より前に)自然に目が覚めてしまう場合を指します。
「もっと寝ていたいな」と再び眠ろうとしますがなかなか再入眠できず、結局そのまま朝を迎えてしまうといった感じです。
不眠により起こり得ること
熟睡できないことで、日中の覚醒度が落ちたり、実際に日中にうとうとと寝てしまうことで昼夜逆転の状態となり、さらに夜眠れなくなる、といった悪循環に陥る可能性があります。
さらに脳や身体の十分な休息が取れていない日が続くと、身体の不調にもつながりイライラしやすくなるなど認知症の他の周辺症状の悪化を引き起こしかねません。
自立歩行されている方は、日中の眠気からふらふらして転んで怪我をする危険も高まります。
対応
非薬物療法
まずは環境の工夫が欠かせません。例えばこんな対策があります。
- 朝、日光を浴びる。(遮光カーテンではなく自然に朝の光が入ってくるようにする)
- 日中はよく活動する。(外出してウォーキングなど運動をするとよい)
- 食事はできる限り規則的に同じような時間帯に摂る。
- 昼寝をする場合はほどほどに。(横にならずに20分程度がよいとされています)
- 部屋の照明は、夜は蛍光色ではなく暖色系の間接照明にしてみる。
- 寝る前のお酒は控える。(寝酒は中途覚醒に繋がります)
- 寝る前の水分量は控えめにする。(トイレに起きる頻度を減らす)
- スマホなどの電子機器は入眠前は控える。
- 入眠までのルーティン化(入眠儀式化によって身体が眠りの準備に入りやすくする)
- 寝室の暗さ、静かさ、気温、湿度などの環境を整える。
- アロマなど香りを取り入れてみるのも一手。
ご本人がリラックスできている状態をつくるために一つずつ試してみるといいと思います。

薬物療法
認知症の患者さんだと先ほどの対策をしてみてもなかなかうまく行かないこともあります。
そんなときは睡眠薬の力を借りることもあります。ただ、高齢の方は薬の代謝も落ちているので効果が遷延しやすかったり、副作用が出やすい側面が常にあるため慎重に開始、調整する必要があります。
副作用などを考慮しても、こんなときは睡眠薬の開始を検討してほしいと思います。例えば、
- 連日の夜間不眠で介護者の休息がとれない。
- 夜間に徘徊してしまう。
このように介護者が休息をとれないというのは緊急事態ですので、早めに相談をお願いします。
睡眠薬の使い分けに関しては別の記事でまとめようと思います。
おわりに
不眠はご本人の休息だけでなく、介護者の休息にも影響のある症状です。
特に、認知症の場合は非薬物療法として環境の工夫などを行っても改善しない場合があります。
そんなときは医療機関で身体の具合が悪くないかなどを調べたり、睡眠薬の調整を行う必要がありますので早めに受診の相談をしましょう。

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